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バックカントリー・キャンプ

REPORT: MINORU SAITO

ついに開催された第一回バックカントリーキャンプ。いろいろと初めての試みだったが天候にも恵まれ大成功だった3日間をお伝えしていこう!!

 

まずなぜバックカントリーなのか?

ここ数年スノーボードの主流と呼ばれるシーンはパークスタイル。ゲレンデに人工的に作られたキッカーやレール・ボックスなどのアイテムを使って遊ぶと言うのがこのスタイル。メディアでも多く紹介され、華麗なエアトリックやテクニカルなジビングなどがもてはやされている。実際パークスタイルのキャンプもいろいろ開催されている。そしてキャンプと言えば王道を行くのがハーフパイプ・キャンプ。オリンピックの種目にもなっているハーフパイプのテクニックを磨くのがこのキャンプの目的だ。しかし、考えてみてほしい。これらは全て人工的に作ったセクションを使っての遊び方で、パーク・パイプがないところではできないスタイルでもある。スノーボードの歴史をひもとけば元は雪の上でサーフィンできないか?というところからスタートしている。そう、もともとのフィールドは裏山のパウダー。滑り方は自然と一体になること。パークやパイプはあとからスケートスタイルを取り入れたもの。多くのスノーボーダーを魅了してやまないパウダーライディングはスノーボード誕生の瞬間からあったのだ。そして本当のパウダーは人工的に管理されたゲレンデでは味わうことができない。どこまでも沈み込む底なしのパウダーと大自然を感じるため、過去に大会で観客を沸かしたライダーもレースでコンマ1秒を争ったライダーも、最終的にはもっともスノーボードらしいところに還っていく。そこがバックカントリー。そんなバックカントリーは自然が剥きだしであるから当然各自の意識と知識、そして何よりも経験が必要だ。その第一歩を踏み出すための助けにとこのバックカントリー・キャンプの企画が生まれた。

・・・などと書いているとずいぶんと大げさだし、そこには深い意味があるような感じだが、実際は「こんな楽しみ方もあるからとりあえずやってみよう」というノリで、dmkクラブのチャレンジ精神があれば充分に楽しめた3日間だったのだ。長々となってしまったがそれではキャンプレポートの始まり始まり〜。


(写真左、今回このプロジュクトに参加したみなさん。バックカントリーの魅力はこのハイクアップから)
(写真右、このキャンプを企画したミノル部長のパウダーごちそうさまシーン。バックカナントリーの魅力にハマる絵)

DAY1 ファーストコンタクト

集合の朝、それぞれにキャンパーが集合、と思いきや意外にも結構みんな相乗りで来たりと、この辺はさすがアットホームなdmkクラブ。朝のあいさつを済ませる頃にはガイドチームが参上し、とりあえずご挨拶タイム。今回ガイドしてくれるのはTRIFORCE(www.trifoece.ne.jp)の沼野健輔さん(JSBAプロライダー・日本山岳ガイド協会認定登山ガイド)ネイサン・ベネットさん(カナダ雪崩協会スキーオペレーションレベル1)元レスキューの新井氏(初日のみのスペシャルゲスト)。そしていよいよバックカントリーギアのレクチャーがスタート。そう毎度のことながらdmkのキャンプは単刀直入、「やるときはやるけんね」というスタイルなのである。とりあえずザックにギアをくくりつけたらゴンドラ乗り場に突撃!この日は快晴で一気にテンションが上がる中ゴンドラとリフトを乗り継ぎアプローチポイントに到着。まずはハイクアップの準備。ここで初めてスノーシューを履き、ポールを握り、ビーコンの発信を確認するのだが、これが慣れないと一苦労。まずポールは伸ばせば良いのですぐにわかるのだが、スノーシューが難しい。バインディングとは勝手が違いなかなかしっかりと留められない。ガイドさんの助けを借りて何とか装着完了。ハイクアップの準備ができたところでまずはビーコンの講習。雪崩に飲み込まれるという最悪の状態から救い出してくれるビーコンの練習はこの後一日一回はやるのだが、この日は全てのことが初めてのことばかり。お目当てのライディングまではもうしばらく掛かるのだが、この講習を怠ってはバックカントリーで楽しむことはできない。「山は楽しいだけでは入れない」とはこの日のゲストガイド新井さん。この人が実はもの凄い人なのだが、その実力が発揮されるのはお昼ご飯のあとのこと。一通りの講習が終わったところでこの日の目標地点に向けてハイクアップ開始。ハイクアップのペースをゆっくりとし1時間弱をかけてこの日の目的地に到着。今日はここでお昼ご飯。各自持ってきたおにぎりや飲み物で広大な景色を楽しんだ。ご飯の後はカナダエキスパート・ファーストエイドオペレーション・レベルAの資格を持つベネットによるファーストエイド講習。そして今回のスペシャルゲスト新井さんによる救急搬送の講習。実はこの人、群馬県谷川岳では知る人ぞ知る元レスキューの人で、ニコニコしながらも山での知識と経験を元に「実践できる」内容の講習を行っていただいたのだった。そしてお待たせのライディング・タイム!!初日と言うこともあり比較的短いランとなったがゲレンデでは味わえない充実感と心地よい疲労感を感じながらこの日の日程終了。夜はゆっくりと疲れを抜くため男部屋はマンガ喫茶と化していた・・・。

(写真左、集合場所に続々集まるdmkクラブ軍団の駐車場での一コマ。一日の冒険はここから始まる。)
(写真右、スペシャルゲストの新井さん。スプリットボード+フル装備からのビッテリーターンにはキャンパー全員やられました)


DAY2 楽しいだけが山じゃない!?

さて、早朝からすっきりと目が覚めるも外はあいにくの曇り空。この日からはTRIFORCEの永井拓三さん(日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド)も合流し、より本格的にバックカントリーに入る予定だ。各自装備の確認を行い初日と同じルートを通ってアプローチポイントに。この段階で少し雪がぱらついてくるが、とりあえずハイクアップ開始。昨日のお昼ポイントで軽く休憩を取りさらに上に。しかし、雪は強くなる一方で、高度が上がると木立も少なくなり横殴りの風がスノーボードにもろに当たって、体のバランスを崩してひじょうに登りにくい。ガイドさんの判断により目標地点までは行かないで木が風を防いでくれる場所でストップ。体が冷えないように急いで昼食を取ると早速ライディング開始。この日は雪と風を避けるためにトゥリーランをメインにラインを選ぶ。前日とはうってかわって厳しさを見せる自然の力を実感しつつゲレンデに復帰。予定時間よりも早くゲレンデに帰って来たので、せっかくだからと言うことでこの日もビーコン・トレーニングを開始。この日はアナログビーコンとデジタルビーコンの違いを実感すると言うことで各自両方のシステムでビーコン操作を体験。この日は「楽しいだけじゃないんだぜ」という山からの軽いジャブを受け、自然の前に人間(特に経験の浅い者)の無力さを感じることとなった。

しかし夕飯の席では「これだけ降ったら明日は・・・パウダー!?」と季節外れのパウダーを期待し盛り上がるご一行様。dmkクラブのパワー恐るべし!!

DAY3 奇跡は起きた・・・のか?

パウダーの期待に胸を膨らませながらアプローチ・ポイントに向かう。3日目ともなると慣れてきたようで、他人の助けはそれほど必要なくなったのか、準備の手際が恐ろしく早い。慣れたのか、それとも単純にパウダーへの期待感がなせる技なのか? 3日目の天気は雲一つない快晴。ピーカンである。この日はウエアもザックに縛り付け身軽になってハイクアップ開始。ガイドさんが驚くほどのハイクアップペースを維持し予定よりもかなり早く目標地点に到着。お目当てのパウダーは・・・ちょこっとだけどありました!!昨日の悪天候を耐え抜いたキャンパーへの贈り物なのか、ハードパックの上に足首程度のパウダースノー。3月の中旬〜下旬と言うことと今年のやたらと暖かい天候を考えればまさに奇跡!これから滑るであろう斜面を見ながらのハイクアップはかなりのウキウキ気分。バックカントリーのペースになれてきたのかお昼もゆっくりとリラックスしてピクニック気分。そして滑り出す前の最期の講習が待っていることはこの時点では知らされていないのだった。集合写真も無事撮りおわりさて、滑りましょうかと思いきや、「じゃ、穴掘りましょうか」とガイドさんのお言葉に、「おぉ、ピットチェック(雪の層の確認)していなかったね。そんじゃいっちょ掘りますか」と軽い気分で掘り出すも、この日初めて自分たちで掘るピット(穴)は思ったよりも巨大。15分ほどかけて結構な大きさのピットを掘って、実際にピットチェック。結果問題なし。しかし、ここでついに今回最大の恐怖体験が待っていた。「じゃ、埋まってみましょう」こともなげにさらっと言い切るガイドの沼野さん。いやちょっと待て、この穴に埋められるのか?と互いに顔を見合わせるキャンパーチーム。ノリノリのベネット&沼野。それじゃ男から行きますかと有無を言わせぬ様子で穴に寝かせギブアップの時は言ってくださいね〜とひじょうに軽いノリでバンバン雪をかぶせていく。この埋没体験、はっきりいってかなり怖い。徐々に増していく雪の重みと圧迫感。そして光が0の暗闇。ギブアップのゾンデを動かすのさえやっとの思い。雪崩に巻き込まれたくないと真剣に思う体験なのだ。ガイドの永井さん曰く「これで、どんだけ雪崩が恐ろしいか体験できたでしょ。間違っても雪崩に遭いたくないと思うし、そう行動するようになるんですよ。だからみなさん埋まってください」と当然のごとくレディース・チームも躊躇無く埋める。全員恐怖体験を経験したところで今度こそ滑り出す準備を・・・と思いきや今度はベネットが「私の友だち雪崩に巻き込まれました。誰か助けてください!!」といきなり騒ぎ出す。一同唖然とするも、実はこれ実際に雪崩が起きてしまったときのレスキューシュミレーション。ビーコンを受信モードに切り換え捜索開始!雪崩に巻き込まれた場合の生存率は15分を境に極端に悪くなる。この2日間の講習の確認とも言うべきこのシュミレーション。dmkチームはガイドの助けなしに見事に15分以内に全員を発見。講習の成果を確認できたのだった。そして念願のライディング・タイム。実を言うと今回のキャンプにはプロ・カメラマンの金子さんが同行していて随時写真を撮っていてくれたのだ。キャンプの内容などは来シーズンのSnowBoarder誌に掲載されることが決まっていた。最終日、天気快晴、さらにSnowBoarder誌に掲載確実と来れば張り切って滑らない方がおかしいでしょう。沼野さんがお手本のラインを見て、いよいよライディング・スタート。昨日の奇跡のパウダーを味わいながら思い思いのラインを描く。この3日間で最高の瞬間。結構な時間をかけて登ったのに滑る時間は本当に短い。しかし、その短いライディングはゲレンデでは味わうことの出来ない至高のライディングなのだ。

こうして長かった3日間は全て終了した。しかし、最高のランと思っていた一本も「あそこでこういうラインを取れば・・・」悔しがるキャンパーも少なくない。ゲレンデでは簡単にもう一度トライできるが自分の足で登るバックカントリーではそう簡単にもう一回やり直しとは行かない。常に一発勝負。キャンパーにとって最高の瞬間は、次の目標へのステップとなり、パークやパイプとは違った「ターンとラインで自分を表現する」という新しい世界の扉を開いてくれたのではないだろうか?


このキャンプのライディングシーンや講習の詳しい内容は04/05シーズンのSnowBoarder誌に掲載予定(どの号になるかは未定)です。

Project Powder to the People
2004年3月19日〜21日
新潟県神楽峰にて
ガイドTRIFORCE 永井拓三、沼野健輔、ネイサン・ベネット
スペシャルゲスト 元レスキュー、新井 孝之
カメラマン 金子 雄爾
キャンパー 落合 克宏、鈴木千代子、佐久間 修意、松本 英子、梶原久美子、佐藤 優
Special Thanks 実業之日本社SnowBoarder誌
以上敬称略

プロジェクトリーダー ミノル